美術品の扱いと保存5

5 茶入編

留意すべき扱い方

古瀬戸 芋の子茶入 鉄刀木挽家 小堀宗中(筆)
古瀬戸 芋の子茶入
鉄刀木挽家 小堀宗中(筆)
茶入はその殆どが陶器で出来ております。
漢作、唐物から南蛮、国焼では最大の古瀬戸、備前、丹波、薩摩、唐津、高取、朝日、膳所、上野、志戸呂等、作家では仁清、乾山等色々とございます。
形も茄子、尻膨、文琳、丸壷、肩衝、大海、内海、鶴首、瓢箪、鮟鱇、円座、るい座、等色々とござます。

まず留意すべき扱い方ですが
破損しやすい場所は何と言っても口の立ち上りです。
古い茶入れを拝見いたしますと殆どが破損して修理跡がございます。
薄く繊細な部分ですのでくれぐれも気をつけてください。
では具体的にどういう風に気を付けたら良いのかを説明いたします。
お点前中で破損する事はまずございません。茶杓をぶつけたぐらいでは破損しませんし、茶碗とぶつかっても口ではなく底の破損が多く見受けられます。
一番多いのが水屋でのお茶の出し入れ時で、他に転がっての落下、他のお道具との接触が多く見受けられます。
こういう事を踏まえて水屋での作業をお願いします。

お使いになられた後は必ず中を拭いてください。古いお茶が茶入れの内側に付いておりますと次回使用するころには茶色く変色して新しいお茶を入れても斑模様になった不味いお茶を飲むことになります。
こういうことが無いように良く拭いてください。たまに洗っている方がおりますが茶入れには釉薬が掛っていない土見せが必ずあります。洗いますと水が浸み込み変色してきます。
どうしても完璧に内側を拭いたい方は硬く絞った布巾等を中に入れ回すように何回か拭かれればある程度は綺麗になります。
あまり汚れてなければ乾いた布巾でも十分に拭えます。

さわってはいけない場所

基本的にはありませんが古い名物茶入の土見せには触れない方が良いかもしれません。
特に女性の方の化粧品やクリームの油分が良くありません。
古い茶道具屋さんの中にはこの化粧品に対するアレルギーがある方が多々ございます。

仕服

古瀬戸 芋の子茶入 鉄刀木挽家 小堀宗中(筆)
古瀬戸 芋の子茶入 鉄刀木挽家 小堀宗中(筆)
仕服には御存じのように古い時代からの名物裂がございます。
とても貴重な裂ですのでお点前の拝見のように紐を持ち拝見した方が宜しいです。
もちろん使用は控えた方が宜しいと思います。
殆どの場合は中込を入れて保存しておきます。
切れてぼろぼろになりましても名人の方に修理をお願いしますと殆ど解らなく出来てきます。
くれぐれも捨てないでください。


古瀬戸 芋の子茶入 鉄刀木挽家 小堀宗中(筆)
古瀬戸 芋の子茶入 鉄刀木挽家 小堀宗中(筆)
蓋は殆どが象牙でたまに骨、鹿角、とても珍しいのは一角鯨の角、等がございます。
各茶人好みの蓋も色々とございます。上等な象牙の芯の部分を使用した巣入りの蓋もございます。
蓋裏の金箔は昔は茶会の度に張り替えておりましたが現在では古い金箔の方が感じが良いためにそのままにしておかれる方が多くなりました。
蓋の摘みの部分には特に埃がたまります。象牙についた汚れは硬く絞った布巾で拭いても大丈夫ですので良く掃除してください。

保存方法

古瀬戸 芋の子茶入 鉄刀木挽家 小堀宗中(筆)
古瀬戸 芋の子茶入
鉄刀木挽家 小堀宗中(筆)
特別な保存方法は必要ございませんが、仕服は年に1~2回虫干しして頂ければ宜しいかと思います。
直射日光は裂地を痛め象牙の蓋が割れますのでくれぐれも陰干しでお願いします。
特にマンションでの保存には十分な配慮が必要です。戸棚の上には収納しないでください。
暖房の乾燥による破損が多々ございます。箱の反り、挽家の割れ、象牙の蓋の反り等せっかくのお道具がだめになります。

御存じのように信長・秀吉・家康と茶道具、特に茶入を重要視して恩賞としました。
現代では茶入の位置付けが変化してしまいました。時代の移り変わりと人気の変化が見て取れます。
私も手持ちの唐物茶入れを持参して桃山時代に行けたらと思う昨今です。

古美術ささき  佐々木 一

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