美術品の扱いと保存3

3 釜・風炉編

それぞれ扱いが違いますので手入れ方法と保存方法を書いていきます。

現代の釜の殆どは洋鉄で製作されております。
現在日本で何人かは和鉄(わずく)で製作しておりますがその数は一桁と言われております。
洋鉄の釜は明治頃から盛んに作られるようになりました。海外より安い製鉄が入ってきた事と国内での精錬が盛んになったためです。

和鉄(わずく)の釜の良い点は室町時代の釜が現役で使用できるように長い年月使用できます。
ただ和鉄(わずく)の釜は原料が高いのと歩留まり(完成品の割合)が悪いため価格が高くなります。
銑鉄の釜は毎日使用いたしますと寿命が数十年ぐらいでと言われてはおりますが使用方法により100年以上は使用できます。材料費も安く歩留まりも良いため価格が安く出来ます。

各々長所、短所がございますのでご自分の使用方法と予算に合った釜をお選びになれば宜しいかと思います。


初代 長野垤志(造) 撫筋釜(炉釜)
初代 長野垤志(造) 撫筋釜(炉釜)
最初に新しい釜を使用するときです。

殆どの場合は錆止めのため中に漆を塗っております。その為に漆の匂いがなかなか抜けません。漆は無害ですがどんどんと剥がれてお湯に漂います。柄杓に黒いものが入っておりましたら大抵は漆です。 剥がれてきても適正に使用していれば錆びることも、穴が開く事無く使用できます。

火にかけ2日ぐらい使用して頂ければ金気と匂いは薄くなります。
新しいうちは内側は決してごしごしと洗わないでください。せっかくの酸化被膜が取れてしまいます。
使用しているうちに湯垢も少しづつ付いてお湯も美味しくなります。

炭を使用の場合は使用後は棕櫚(シュロ)たわしか釜用たわしで良く底を洗ってください。
水気を切り五徳にかけ自然と乾かしてください。炭はすっかり火消壷に取ってください。余熱で十分に乾きます。決して空焚きしないでください。変色や、割れたりと釜が痛みます。電熱器を使用の時はオフにしてください。
釜の中に水が残っている時は布巾等で押さえて水分を残さないでください。どうしても乾きが悪い時はドライヤーで乾かしてください。
外側を素手で触らない事も重要です。汗の塩分や油分、女性では化粧品の化学物質等で錆や変色の原因になります。付いた時には熱湯を掛けて布巾等で良く押さえてください。

使用頻度の高い釜は鉄鐶で上げたり下ろしたりしておりますと鐶付の穴が光ってきます。
この場所は光らない方が宜しいので鉄より柔らかい真鍮鐶を使用するのも宜しいかと思います。千円ぐらいで買えます。

古い釜で、もうすでに内側が赤くなって錆びている釜(錆が浮き上がっている釜も)はそのまま使用しても錆が出るばかりですから今度は中の錆をごしごし落としお茶の葉(さつまいもの皮・タンニン酸でも可)を入れ2日ぐらい煮れば内側に被膜が出来、ある程度は錆が押さえられます。面倒な方は業者に頼んで焼き直ししてもらえば新品同様になります。


時代象耳風炉(江戸前期釜屋作)に四君子図六角釜添
時代象耳風炉
(江戸前期釜屋作)に
四君子図六角釜添
風炉での注意点です。

水滴痕の輪ジミは残念ながら仕上げ直さないと取れませんのでくれぐれも注意してください。輪ジミをを付けない方法としてはこぼしたら直ぐに押さえて水分を取るしかございません。まさか茶事や茶会でお点前中に一々押さえるわけにはいきません。こぼさない為の一層の精進しかありません。良く輪ジミを取るために金属磨きで磨いたり、サンドペーバーで磨いたりしている方がございますが表面にキズが付いたり変色いたしたりします。
唐銅の蓋も同様です。使用後は湿った布巾で汚れをとり、乾いた布巾で空拭きしてください。
風炉を使用しなくなったら直ちに中の灰を出してください。
灰はアルカリ性ですので金属が腐食します。当店でもお客様の所から風炉を引き取りますと殆どに灰が入っており、錆(緑青・ろくしょう)がございます。引き取り価格も安くなりますのでお気を付けください。


遠州好 時代唐金 色紙風炉
遠州好 時代唐金 色紙風炉
保存方法

釜の一番良い保存方法は、昔は蔵に吊り下げておけば良いと言われておりましたが現在ではそれも出来ません。釜は布に包まない方が宜しいかと思います。たまに釜に布が錆で張り付いている事があります。
四隅に隅立を入れて固定するだけで宜しいでしょう。
反対に唐銅・古銅等の柔らかい金属はスレやキズが付かないように柔らかな布で包んで収納してください。
必ず布は湿気を飛ばしてから使用してください。
保存場所は特に選びませんが直射日光が当たる所や異常に高温になる所は避けてください。

古美術ささき  佐々木 一

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