茶会訪問記

満開の枝垂れ桜が晴れの茶会に”いろどり”を添えます。
満開の枝垂れ桜が晴れの茶会に”いろどり”を添えます。

 朝10時の濃茶第一席を前に準備で忙しくされている水屋をお尋ねすべく、9時過ぎには新宿御苑の門をくぐり楽羽亭へと足をむけました。例年になく遅開花の桜でしたが、茶会当日は、週間天気予報ではあいにくの花散らしの雨の予報。にもかかわらず、当日の4月10日は、思いがけず晴天に恵まれました。釜が懸けられる新宿御苑も、都内屈指の花の名所です。満開の桜は、正に盛りの春を謳歌するかのように咲き誇り、花弁が風に誘われ散る様も圧巻!絶好の茶会日和です。

 楽羽亭のすぐ脇の枝垂桜も満開で、多くの入園者がしきりにシャッターを切っておられました。

 お水屋をお尋ねしたのは、茶会の前に席中を撮影させていただくためでしたが、ご社中の皆さんは、皆てきぱきと準備をすすめられており、9時過ぎにはすでに席が整えられておりました。

濃茶本席の床飾り
濃茶本席の床飾り

 濃茶席はいわゆる茶会のメインイベントともいえるでしょう。この日のために選び抜かれた遠州公好みの茶道具が配されて、綺麗寂びの中にもなんともいえない緊張感を醸し出しています。炉の炭はよくいこり、釜が松籟の音を立てる中、掃き清められた席の床には季節の花が生けられ、香が焚かれます。これで、お客様をおむかえする準備が整いました。お客様が席入りされてからは、ピンと張り詰めた空気の中にも和やかにお手前が進みます。


濃茶席手前座の道具揃え
濃茶席手前座の道具揃え

 遠州流のお手前は、武家茶道の流れを受け継いだものです。
武士の茶らしく、どうどうとした所作に武士道にも通じる厳しさと威厳のようなものを感じる事ができます。


花をあしらう亭主。
花をあしらう亭主。
席入り前の緊張のひと時
和やかに主客の会話が交わされ、お手前が進みます。
和やかに主客の会話が交わされ、お手前が進みます。

薄茶席手前座の道具組
薄茶席手前座の道具組

 濃茶席をおえて、畳廊下に出ますと、おりからの風に誘われた桜の花弁が一片二片とたたみの上に舞い込んできておりました。行く春を惜しむ最高の風情に、濃い茶席の名残を感じつつお客様は、薄茶席へと進まれます。

薄茶席の床飾り
薄茶席の床飾り

 薄茶席は、打って変わって立礼席のスタイルを取って行われます。窓を広く取った席中には、障子越しに春の陽射しがまぶしいほど降り注ぎ、賓主の気持ちを和ませてくれます。

 手前座と床は広間席のしつらえで、腰掛けに座られたお客様のちょうど目線の高さに洒脱な道具組がそろえられています。

 春の一席を充分に堪能して一歩外に出れば、御苑の木立の向こうには代々木や新宿の高層ビル群が聳え立っています。“そうだった!ここは、東京のど真ん中だったんだ・・・”ふと我に帰り、あの慌しい日常の現代社会を思い出すのでした。

一服の茶は人をあたかも非現実の世界に誘ってくれます。我々が、お茶を頂きながら何を思うかはそれそれかもしれませんが、その貴重な体験は何らかの形で私達の心を潤し、リフレッシュさせてくれます。

皆さんも、毎日の忙しい時計をちょっと止めて、この別世界を覗いてみてはいかがですか? きっと、癒されると思いますよ。


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