美術品の扱いと保存4

4 水指編

水指と申しましても色々と材質がございます。
金属 陶器 磁器 漆器 木地 ガラス等ございます。
金属 陶器 磁器 は既に花入編で紹介しましたのと同じ手入れ方法です。

木地

杉木地 曲水次
杉木地 曲水次
木地は濡らして使用いたしますので前日から水を張っておくか、全体を水に浸けておかなければなりません。
乾燥した状態で保存しておりますので木が縮み隙間があいている事が多くあります。
知らないお客様からは「水漏れする」と御連絡を受けることがございますが、柄杓と同じように水に有る程度付ければ木が膨張してぴたりと止まります。これで止まらない場合は修理に出してください。

使用した後は木に水分が多量に含まれておりますので風通しの良い日陰に 1週間ぐらい干してから収納してください。
生乾きの状態で収納いたしますとカビが生え変色し使用できなくなります。

ガラス

バカラ水指
バカラ水指
ガラス製品は長らく使用してないとまれに「ガラス臭い!(アルカリ性で酸っぱい臭いです)」作品が出てきます。
これはソーダガラス製品で起きる現象で空気中の水分と結合してガラスの石灰が溶けだす現象です。良く洗って使用して頂ければ問題はございません。
ちなみにクリスタルガラスではこの現象は起きません

漆器

朱手桶
朱手桶
水指の漆器は手桶、漆桶、塗の釣瓶、塗曲げ、等と塗蓋がございます。

漆器のダメージとしては水滴の輪ジミと擦れキズが一番多く見受けられます。

予防方法としましては金属製品と同じように水滴が付きましたらふき取るしかございません。
乾きますと丸く輪ジミが出来ます。

この輪ジミは水道や井戸の水の中にはカルシウム・鉄分などのミネラルやカルキ(水道)などが豊富に含まれています。水滴は水分が蒸発してしまうため含有成分(カルシウムなど)のみが取り残されてしまいます。そしてこの取り残された成分(特にカルシウム・マグネシウム・カルキ)が白く残り、乾燥が進むにつれて石になっていき、かなり強固にこびり付いてしまうわけです。ちなみに雨水は有成分が含まれていない為輪ジミになりません。

出来たての物はまだ完全に石化しておらず、単にカルシウムの乾いたものですから、もう1回洗いなおすか、水拭きかで比較的簡単に除去できます。時間が経ち輪ジミが強固になりましても特殊な手入れ方 法により除去出来ますが費用と時間がかかります。

塗蓋にも気配りをお願いします。形状も一文字蓋・掬い蓋・盛蓋とあり、口の形状と水指の姿により取り合わせます。
塗りも真塗・溜塗・目はじき塗・絽色塗と色々とございます。この蓋が茶会でも良く目に付くために上等な蓋を誂えるわけです。誂え先は作家に頼んだり、京塗、山中塗等に出します。この蓋が汚れていたらせっかくの水指が半減してしまいます。
よってご使用になりましたら良く拭きあげてください。

手脂や稀に女性の化粧油が手を介して付着いたします。薄い中性洗剤やぬるま湯で柔らかいタオルや布巾でそっと洗って頂ければ大抵は落ちます。くれぐれもナイロンたわしやスポンジたわしは使用しないでください。すぐに擦 れ、キズになります。
もちろん食洗器も厳禁です。高温のお湯で洗うため一度で変色し割れたりします。

重要な事は洗ったらすぐに拭きあげる事です。
この場合でも使い古しの柔らかいタオル、布巾でお願いします。未使用の布巾で強く拭いてキズにした方がいます。
漆器は完全に拭きあげれば乾かさなくてそのまま収納出来ます。
この手入れ方法は懐石道具や喰籠等の漆器全般に共通しております。

女性のお肌のシミも大敵ですが輪ジミも大敵(大滴)!です。

古美術ささき  佐々木 一

すべての商品はこちら

ページトップへ